50期の夏 |
先発の野村は右上手から繰り出す直球とスライダーを武器に7回、98球を投げ切った。
打たせて取るスタイルを貫き、奪ったアウトのうち三振は3つだけ。
2回に3ランを打たれ0−4とリードされても、
「後ろ(野手陣)を見たら、絶対に追いついてくれると思った」と、
一緒に頑張ってきたチームメートを信じて投げ続けた。
川村監督も「その後はよく投げた」と目を細めた。
誤算だったのは打線が同点とした直後の7回。2死二塁から1番打者に
勝ち越しの適時打を浴びると、2番にも直球を狙われ右前適時打。
「キレが無かった。追いついてくれた後の2点は、自分の力不足」と悔やんだ。
エースとして迎えた夏のマウンドだったが、ここまでの道のりは険しかった。
昨秋後に右肘を故障。キャッチボールすらまともにできない日が続き、
下半身を強化するためランニングに明け暮れた。
けがを治して迎えた春は、「自分一人で何とかしようとして」思うような投球が
できなかった。自らと向き合い、仲間を信じて打たせて取る投球を目指そうと誓った。
この日、光陵はわずか1失策。再三の好守で野村を助けた。
2回に3ランを打たれた直後には、三塁後方に落ちそうな飛球を遊撃・増田が
倒れ込みながら好捕。野村も「追いつくきっかけになった」とたたえた好プレーだった。
バックが「リードされても粘り強く守ってくれた」と野村。
仲間とともに歩んだエースの夏が終わった。
光陵を率いて4年目となる川村監督は、6回途中から登板した相手エースから 1安打と苦しんだことについて、「リードした状態でエースを投げさせたかった」 と唇をかんだ。打線の巡り合わせで得意の機動力も使えず、 「勝つ気しかなかったので悔しい」。 先発の野村については、「2回2死からの3失点が結果的に大きかった。 でもその後はよく投げた」と力投をたたえた。 |
サインを出す川村監督 |
チーム最多の3安打を放ったのは、2年生の切り込み隊長だった。
初回、1ボールからのファーストストライクを逆方向へ振り抜き左前へ。
2番陶山の犠打で二塁へ進み、好機を作った。3回には2死から右中間への鋭い当たり。
快足を飛ばして三塁を陥れ、1番打者の役割を果たす。
圧巻は4点を追う5回裏2死二、三塁。是が非でも点が欲しい場面で左中間への
2点適時打を放ち、反撃ののろしを上げた。カウント2−2と追い込まれながらも
「食らいついていこうと思った」と、外の直球に対応した。
ヒットになった瞬間は「おいしいなと思った」とニヤリ。
広角に打ち分ける3安打2打点の活躍で、俊足巧打ぶりを存分に発揮した。
まだ2年。来年に向けての思いを問われると、
「先輩たちも応援に来てくれると思うので、一緒に校歌を歌いたい」。
頼もしい左の好打者が新チームを引っ張る。
(文・写真=37期・須黒佑真)