50期の夏

◎エース野村、バックを信じた98球
=粘り強く守ってくれて感謝=


4回表を無失点で抑え、笑顔の野村

先発の野村は右上手から繰り出す直球とスライダーを武器に7回、98球を投げ切った。
打たせて取るスタイルを貫き、奪ったアウトのうち三振は3つだけ。
2回に3ランを打たれ0−4とリードされても、
「後ろ(野手陣)を見たら、絶対に追いついてくれると思った」と、
一緒に頑張ってきたチームメートを信じて投げ続けた。
川村監督も「その後はよく投げた」と目を細めた。

誤算だったのは打線が同点とした直後の7回。2死二塁から1番打者に
勝ち越しの適時打を浴びると、2番にも直球を狙われ右前適時打。
「キレが無かった。追いついてくれた後の2点は、自分の力不足」と悔やんだ。

エースとして迎えた夏のマウンドだったが、ここまでの道のりは険しかった。
昨秋後に右肘を故障。キャッチボールすらまともにできない日が続き、
下半身を強化するためランニングに明け暮れた。
けがを治して迎えた春は、「自分一人で何とかしようとして」思うような投球が
できなかった。自らと向き合い、仲間を信じて打たせて取る投球を目指そうと誓った。

この日、光陵はわずか1失策。再三の好守で野村を助けた。
2回に3ランを打たれた直後には、三塁後方に落ちそうな飛球を遊撃・増田が
倒れ込みながら好捕。野村も「追いつくきっかけになった」とたたえた好プレーだった。
バックが「リードされても粘り強く守ってくれた」と野村。
仲間とともに歩んだエースの夏が終わった。


2回表2死、三塁線後方への飛球を倒れ込みながら好捕する遊撃・増田


◎光陵、リード奪えなかった初戦
=川村監督「勝つ気しかなかった」=


主将の陶山
光陵は終始リードを許す展開で、試合の主導権を握れなかった。

主将の陶山は勝ち越しを許した7回の守りについて
「点を取った次の回に取られてしまい、自分たちの流れを切られた」
と悔しさをにじませた。
追いついた直後を無失点で切り抜けて次の攻撃につなげたかったが、
かなわなかった。

自身は初回に1球で犠打を決めたほか、守備で中前に抜けそうなゴロを
好捕するなど安定したフィーディングを披露。
「自分は守備とバントで上がってきた選手」と胸を張った。

光陵を率いて4年目となる川村監督は、6回途中から登板した相手エースから
1安打と苦しんだことについて、「リードした状態でエースを投げさせたかった」
と唇をかんだ。打線の巡り合わせで得意の機動力も使えず、
「勝つ気しかなかったので悔しい」。
先発の野村については、「2回2死からの3失点が結果的に大きかった。
でもその後はよく投げた」と力投をたたえた。

サインを出す川村監督


◎2年酒井、猛打賞の活躍
=2点適時打も=


1回、左前打で出塁する酒井

チーム最多の3安打を放ったのは、2年生の切り込み隊長だった。
初回、1ボールからのファーストストライクを逆方向へ振り抜き左前へ。
2番陶山の犠打で二塁へ進み、好機を作った。3回には2死から右中間への鋭い当たり。
快足を飛ばして三塁を陥れ、1番打者の役割を果たす。

圧巻は4点を追う5回裏2死二、三塁。是が非でも点が欲しい場面で左中間への
2点適時打を放ち、反撃ののろしを上げた。カウント2−2と追い込まれながらも
「食らいついていこうと思った」と、外の直球に対応した。
ヒットになった瞬間は「おいしいなと思った」とニヤリ。
広角に打ち分ける3安打2打点の活躍で、俊足巧打ぶりを存分に発揮した。

まだ2年。来年に向けての思いを問われると、
「先輩たちも応援に来てくれると思うので、一緒に校歌を歌いたい」。
頼もしい左の好打者が新チームを引っ張る。

(文・写真=37期・須黒佑真)